宇宙から国境は見えませんが

少し前のことになるが、宇宙飛行士の山崎直子さんが退職した。
宇宙飛行に憧れるものとして、女性として、残念で仕方がない。

彼女が宇宙に滞在し時の人となっていた頃、テレビでしきりに伝えられたのは、
ご本人の、家庭と仕事の両立が大変だったことや、
旦那さんの、彼女を応援したい思いと自分も仕事で夢を叶えたい思いとで
葛藤している様子だった。

旦那さんが陰の立役者に徹していないのは、
先に宇宙に行った女性である向井さんの旦那さんや、
他の男性宇宙飛行士の奥さん達とは、対照的だった。

山崎さんの旦那さんを批判しているのではない。
私自身、仕事をし社会に関わっていたいと思う身として、
旦那さんの気持ちも理解できる。
だが奥さんが宇宙飛行士という、そうそうなれないものになったのだから、
全面的に応援してあげて欲しいとも思う。

宇宙飛行士の奥さんにも、仕事をしたがっている人がいるかもしれない。
しかし、仕事をしないで家にいることを、女性は比較的受け入れやすいが、
男性はなかなか受け入れられない。
日本では未だに、男性は仕事をすることを期待され、
女性は、仕事のあるなしは関係なく、家事をこなすことを期待されるからだ。

山崎さんの著作のAmazonでの内容紹介には、
「妻であり母でありながら訓練や激務をこなす山崎さん」
「家事や子育てはどうしているのか」
といった表現が見られる。
男性宇宙飛行士の著作に「夫であり父でありながら」とか、
「家事や子育ては」とは書かれない。
逆に、どなたかの奥さんがテレビのインタビューに答えて
「夫がもっと協力してくれれば、私も夢がかなえられたのに。
 仕方ないから仕事を辞めて付いてきて、今は専業主婦をしているんです。
 えらいでしょ?」
なんて言っても、きっと放送されない。


日本も結構男女平等が進んだという意見もあるが、私はそうは思わない。
女性が海外留学するから、あるいは仕事を得たからといって、
遠方まで夫が付いていったという外国人は何組も知っている。
欧米人にも、アジア人にも、イスラム教国の人でも、そういう夫婦がいた。
しかし、私はそういう日本人カップルを知らない。

日本の、男女差別というのか、ジェンダーの問題は、まだまだ根深いのだ。
科学技術はせっかく一流なのに。
山崎さんの退職は、このような問題の象徴に思えたのだ。